砂の終わり

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繰り返しだった。 毎日同じ道を通い、同じ人間と顔を突き合わせ、同じ人間の似たような授業を受ける。そして、放課後に同じ練習を行い、同じ道を帰って、同じベッドで寝る。 これの何が人生か。話と違う。俺が聞いていた人生というのは、もっと刺激に溢れて創造的で、毎晩寝る前に明日を楽しみに思うような、そんな日々だったはずだ。こんな灰色の風景など見飽きた。いつになったら色が付く。せめて黒白の濃淡だけでも寄越せ。これでは詐欺だ。酷いペテンだ。こんな目に遭うために俺は世界に這いずり出たわけじゃない。誰が俺を騙したんだ。人間ならここに、顔のない奴らがわらわらといるじゃないか。それなのに何故俺まで騙して引きずり出したんだ。もう足りてるだろう。 「おい」と頭を小突かれた。  顔を上げると数学教師の顔があった。 「お前ちょっとこの問題解いてみろ」  教師は黒板を指さした。その一番上段には数式が一つ書いてあった。全く意味がわからなかった。 「わかりません」 頭を思い切り叩かれた。痛痒。生きてる証。それを感じさせる肉体すら煩わしい。毎度に呼吸をすることも面倒くさい。不随で動くこの鼓動も喧しい。 世界と俺を分かつこの身体が邪魔になる。だけど、世界と一体化したいわけじゃない。 ただログアウトするようにこの身体から脱け出したかった。
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