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神社に向かう道中、文弥は霊夢に質問を投げかけ続けた。
幻想郷とはどんなところか、どんな生物が存在するのか。どういった生活をしているのか。
霊夢は事細かに教えてくれた。しかし答えられないものがひとつだけあった。
「・・・あと、俺が幻想郷に連れて行かれた理由ってなんなんですか?」
「それは分からないわね。まぁ紫が直々に連れてきたのだから特別な理由がありそうだけど・・・」
「紫?」
「八雲紫。あなたを幻想郷に連れてきた妖怪よ。神出鬼没で詳しいことは語らないからあまり気にすることはないわよ。」
「なるほど・・・」
文弥の納得は早かった。今度は霊夢から話し出す。
「それにしても珍しいわね、あなたの目の色。」
「オッドアイですか・・・こっちの世界でもこの目は珍しいんですか?」
「幻想郷で一人しか見たことないわね。人間がオッドアイなんて見たことないわ。」
文弥は右目が赤、左目が茶色のオッドアイだった。
「服装が普通なせいかその目がより目立ってるわよ。」
「服装に関しては学校の帰宅途中にこの世界に来てしまったので・・・」
服装は制服のままだった。
「替えの服はあるの?」
「一応カバンの中にジャージがあるので」
「なら服は大丈夫そうね。もう着くわよ。」
「なんかここまで遠く感じました・・・」
「そりゃそうよ、魔法の森から神社まで歩いてきたのだから。」
魔法の森、そこが自分がこの世界に落とされた場所なのだと理解した。
「それにしてもここまで息切らさずについてくるなんて・・・」
「体力には自信がある方ですがここまであるとは自分も思いませんでした。」
神社の前に着いた。見た目は元いた世界と変わらないように見えた。ただ・・・
「人・・・いないですね。」
「まぁいつもこんなもんよ。むしろいた方が奇跡だわ。」
(信仰を集めるのが仕事の神社に人が来ないって大丈夫なのか?・・・ってことは賽銭箱の中身は・・・)
文弥はそう思いつつも黙っておいた。言ってはいけない気がしたからだ。
「ひとまずしばらくはここに泊まってもいいわよ。それなりの生活はできるから。」
「いいんですか?今日出会ったばかりの俺が泊まったりして。」
「別にいいわよ。むしろ彷徨って途中で飢え死にとかされた方が困るわ。紫になんか言われそうだし。」
「ならお言葉に甘えて。お世話になります。」
「えぇ。よろしくね、文弥。」
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