その日の晩の話

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だって分からないんだ、普通の人との距離の測り方なんて知らないし恋愛なんて未知の領域だ。 「!いや、ちょっと待って!!俺、後悔してるわけ!?」 思わず自分に突っ込んでしまったけどそんなことはどうでもいい! 例え変態でイケメンな吉田さんとまた同じ状況に戻っても俺メリットなくない!? いや、あの神々しい顔を見れるのはいいけど、常にステータス異常にされるんだよ俺! なら、いっそこのままの方がいいに決まってる。 だから気にする筈なんかない、はずなのに… 『ごめんね』 最後にそれだけ送られてきたメールを、とても寂しく感じてしまったんだ。 (写真だけなら、いくらでも見てたのにな…) はぁと溜息を吐きながら、引出しにしまってあるアルバムを開く。 アルバムには、この学園の天使と呼ばれる女生徒達やファンクラブにまで入った吉田さんの写真がびっしり。 写真はどれもカメラの方を見ていないし明らかに誰かによる盗撮なんて一目瞭然。 その一枚を手にとり、じっと見つめる。 (ムカつくくらい、イケメン…) くっきりとした整った顔立ちに、ほどよい筋肉のついたバランスのいい体。 長い睫毛に色気むんむんの垂れ目。 これで性格が悪かったらファンになんかならなかったんだろうけど、女子にはめちゃくちゃ優しいし、男友達だって多い。 なによりも、やっぱり目で追ってしまう…あの顔を。 (はは、俺ってほんと面食いだな…) あんな人が俺と友達になろうなんて、この先一生ないのに 勿体ない事したなー。 『しょーた くん』 「――――ッ!!!」 あの声が頭の中を過った瞬間、バンッと音を立てながらアルバムを閉じてしまった。 「ぜぇ、ぜぇっ‥―――よし!冷静に考えよう、俺」 例え俺が女の子でも、王子様からの告白なんて受けるはずがない。 (否!受けない、拒む、断固拒否!っていうか完全に遊ばれている!つまり、今の状況でもそれは変わらない! 吉田さんは俺の反応が面白いだけなんだ!) そうだ! このまま返事もせずにいよう、そうすれば一昨日の日常に戻るはずだ。 ――――戻るだけだ。 吉田さんがいない、いつもの日常に。
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