その日の晩の話

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何で逃げるの? もっと会話がしたい。 いっそのこと彼に触れたい。 また、俺を見てくれたら。 さっきの泣きそうな顔をニッコリした笑顔にしてくれたら。 たぶん本能に従順な俺はその場で押し倒してしまう。 いや、だって俺若いからね。 最初は確か、こんな感じの欲求だった。 この気持ちを素直に相談したら友達が話に乗ってくれ、言われたとおり実行した。 強引だったけど付き合えたことが嬉しくて嬉しくて、俺はずーっと舞い上がってたのに…。 「はぁ…」 思わず溜息を吐きたくもなる。 確かにいささか暴走していた自覚はある…多少。 (いやでもあれは翔太君の反応が可愛かったからだし、しょうがない…) けど、 『だったら、女の子と付き合って下さいよっ!』 傷つけるつもりはなかったのに、泣きそうな顔をさせてしまった。 ファンクラブに入るくらいだから俺のことを好いてくれているのだと、当然のように思ってしまったのがそもそもの間違いだったのか…。 そんなことに、今さら気がつくなんて…。 「ごめんね…」 だから、あんな顔しないでよ。 「ちょっとーそこでウジウジするのやめてくんない?」 「分かってるよ。けどこんな時くらい凹んでる友達、慰めてよ」 じろっと友人を見ると、呆れた様な複雑そうな顔をしていた。
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