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生まれ育った我が家を出て十数年が過ぎた。
新幹線に乗り、住み慣れた都会の風景を眺めがら、故郷へと思いを馳せた。
停車する度、徐々に方言が変化していく。
新幹線を降り、在来線に乗り換え、車窓から見る景色は変わってないものものもあるが、最後に見た景色より騒々しいものになっていた。
『便利になったんだ。』と思いながら、地元の駅へ降り立った。
駅からバスに乗る。人は疎らだ。
自宅近くのバス停で降りると、目の前には長い坂道が伸びている。
思い荷物を抱えながら坂道を登る。
体力のなさに自分で驚いた。
自転車をこいで登っていく高校生が恨めしい。
実家へ帰る坂道の途中に中学校がある。
校舎はそのままだが、耐震補強がなされ、転落防止の柵が取り付けられ物々しい姿になっていた。
休憩がてら門の外から学校を眺めていた。
駐車場には何台か車が止まっている。
校舎から体育館へと続く渡り廊下を走っていく生徒達が見えた。
先生らしき人と目が合い、軽く会釈する。
荷物を持ち直し学校を後にしようとした。
「ミキ?」
「はい?」
声をかけられた方向を向くと見覚えのある顔だった。
「稔?先生してんの?」
「おぅ、帰ってきたんか?」
「法事でね。」
「送ったるから10分待っとき、その荷物で家まで大変やろ?」
「生徒は?」
「部活終わったし、後は戸締まり確認だけ。」
「じゃあ、校舎入ってもいい?」
「職員室に真鍋先生おるよ。」
「じゃぁ、会いに行ってくる。」
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