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「汰っちゃん?」
は!と奈緒の声で我に返る。
「大丈夫?
今、ぼーっとしてたみたいだけど…」
そう言って奈緒は熱があるのか確かめるように
自分の額を俺の額に当てた。
コツン、と少し冷たい奈緒の額。
そして、まさに芸術品みたいな
奈緒の綺麗な顔がキス出来る距離に…
固まる俺。
その光景を見て固まる結千さん。
「んー…
ちょっと熱いかなぁ?」
「っだあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
グヮバッと源司に引き離される。
そして源司に額をペシン!と叩かれ、
源司はすぐに奈緒の方を向くと
奈緒の両肩を両手でガシッと掴んだ。
「奈緒!!!」
「なっ…源ちゃん…なに…?」
「軽はずみなことするな!
もうお前は一般人じゃないんだ。
俺たち三人もただの幼馴染では
もういられないんだよ!
いい加減自覚持てよ!」
いつの間にかスタジオは静まり返り、
源司の声だけが響いていた。
「…ごめん…なさい…」
―――泣くかと、思った。
でも、奈緒は泣かなかった。
バツが悪そうに源司は手を離し、
片手で頭を抱える。
「…怒鳴って悪かった。」
「ううん、私が悪いから。
スタッフの皆さん、お騒がせしてごめんなさい」
くるりと奈緒は振り返り、深々と頭を下げた。
その奈緒の後ろ姿を見て、
こみ上げてくるなんとも複雑な気持ち。
上手く、言葉にはまだ…出来ない。
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