9人が本棚に入れています
本棚に追加
今日の撮影は奈緒だけだったので
すぐに片付けに入った。
俺が兄貴の指示通りに機材を片付けていると
目の前に結千さんがやってきた。
何か言うわけでもなく、ニヤニヤと俺の顔を見ている。
「………何すか?」
「…ツライ恋してるわね…
叶いもしないのに…」
「勝手に恋の行方を決めないでください!」
「冗談よ…ふふふ。」
「…そんな顔に出てました?」
「出てるもなにも、
“奈緒一筋です”って顔に書いてあるわよ。」
「マジすか。
顔洗ってきます。」
「ちょいちょいちょいちょい!」
「…冗談っすよ…ふふふ。」
「つまんない冗談やめてよ。
萎えるわ。」
「うわぁ…」
「なによ?
文句ある?」
「ありません。」
そして結千さんはがんばってねーと手を振りながら
どこかに行ってしまった。
で、結局何がしたかったんだ?あの人。
その後は兄貴に呼ばれ、なぜか怒られた。
“カメラマンになる気はあるのか”と。
…正直、ない。
奈緒と仕事でも会えればいい、
そんな理由で始めたから。
まだ、レンズを通して見たものに
感動を覚えたことはないし。
最初のコメントを投稿しよう!