paradise<楽園>へ招待

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封筒に入っていたカード、携帯、少ないお金しか入ってない財布を持ち十時に間に合うよう八時半に寮を出る。 十五分歩くと駅に。 そこから何駅か乗り継ぎ、次に地下鉄乗り換える。 通勤ラッシュなのか人が沢山乗っている。 そして春香と同じ駅で乗り継ぎ、地下鉄では同じ駅で降りる人を三人程いた。 昔の癖でこういう時になると観察力が鋭くなってしまう。 (この人達もparadiseに?それとも関係者か?) この駅から港まで真っ直ぐ歩けば着く。 春香は地下鉄から降り、三人の後ろを歩きながら注意深く見る。 目を離さないように、獲物を見逃さない豹のように。 もし、関係者なら人がいない所で・・・。 忘れていた感覚が段々戻ってきた。 暗い夜道、見失いように目を光らせ、人気がない所で背中に迫り・・・。 昔の映像が脳を横切る。 我に返った時には潮の香りが鼻にこびりついていた。 今は坂道で港は見えないが、もうすぐ見える。 余計なことを思い出さないように、汚れを落とすかのように首をブンブンと振る。 (ダメだ、思い出すな。あの頃に戻るのは僕の昔のことを知っている奴らだけだ。) 心の扉に鍵を掛け、その周りを更に鎖でグルグルに巻き、軟禁錠で閉める。 これでもまだ足りないぐらいだ。 それ程、春香の中に眠っている化け物は手強いということだ。 坂道を登り終え、今度は下り坂。 もう目の前には港。そこには沢山の漁船が見える。が、一つだけクルーズ客船がある。 クルーズ客船には『paradise』と書かれいる。 わかりやすいな。と適当に感想を述べる。 現在、午前九時五十三分。 早めにきたつもりだったが丁度いい時間になってしまった。 これじゃ関係者を問い詰めることができない。と奥歯を噛み締める。 そしてため息をする。 最後の手段、『paradise』に行くことになってしまった自分に情けなく思う。 港には電車から一緒に来た三人と別から来た五人、計九人が集まっている。 若い女性や男性もいれば、よれよれのサラリーマン。仕舞には中学生くらいの女の子もいる。
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