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「行先は知らないけど、でも<楽園>っていうから自由な世界とか?」
彼女は楽しく気ままな世界だと思っているのか。
そんな訳がない。
僕の秘密を知っている。何らかの暗部の組織的なものなのか。
「また、そんな怖い顔して。そうだ、自己紹介でもしようよ。あたしは榊原 真子。あなたは?」
「松山 春香・・・。」
「いい名前だね!」
照れながら春香は「そうかな?」と返す。
「女の名前だ。」とバカにされることが多いが「いい」と言ってくれたのはこれで二人目なのだ。
「あの、榊原さんは、」
「呼び捨てでいいよ。」
どうやら榊原は名前で呼んで欲しいようだ。
春香が「榊原」と言うと眉を寄せ怪訝な顔をする。
「えーと・・・、真子はなんでここに来たの?」
名前で呼ぶと怪訝な顔からニッコリ微笑むがすぐに悲しい顔をする。
「うーん、家にいたくないからかな?あたし、家で仕事しているからさ。」
「・・・仕事!?えっ、真子って中学生じゃないの!?」
「違うよ!まぁ、この容姿なら仕方ないか。因みに二十二歳だよ。」
こんな幼い顔をしているのに僕より年上だとは。人類は進化しているんだな。と感心してしまった春香。
「春はなんで?」
「香」が抜けていると思ったがそこは突っ込まず、
「僕は・・・」
言葉が止まった。
正直に話すと春香は榊原を殺す。
だから適当な理由をつける。
「大学がめんどくさくて。現実逃避かな?」
「以外、大学生なんだ。働いているかと思った。」
「なんで?」
「だって、腕の筋肉とか凄いもん!!」
エ、ナンテ?
時間が止まったような感覚に襲われる。
思考も一時停止し、ゆっくりと回復していく。
僕ハ肌ガアンマリ出ナイ長袖ト、ジャケットヲ着テイル。下ダッテブカブカノジャージダ。
真子ハ僕ニハ触ッテイナイ。
ドンっと扉を突き破ろうと化け物が暴れる。
そして声が聞こえた。
『殺セ』
クルーズ客船は十時三十分で出航した。
これから行く先は地獄。過酷な争いでもある。
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