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全員が気絶させられた後、クルーズ客船は海に囲まれた無人島についた。
無人島だから無法地帯。
見えるのは森。
しかしただの森ではなかった。
前から見ると分からないが、森の中央には中学校が建てられていた。
傷が付いておらず建てられててからまだ新しい。
榊原たちは中学校の体育館に運ばれる。
だがそこには春香の姿はなかった。
白いスーツを着ている男たちはある部屋で白いカーテン越しに玉座のような椅子に座っている人物に状況を知らせる。
「松山 春香が逃亡。」
「運んでいた者と連絡不能。」
「現在捜索中。」
白いカーテンに囲まれ、その中央で玉座に座っている人物は笑う。
不健康そうな白い肌。
整った顔立ち。
腰まである長い黒髪。
優しい眼差し。その奥には真黒に輝く黒い瞳。
名前は松山 春季。
春香の姉。
死んだはずの春季がここにいる。
「殺した可能性が高いですね。」
丁寧な口調に正反対の毒舌。
「春香は今は置いておきましょう。そのうち戻ってきます。それよりも準備は出来ていますか?」
「はい。参加者にはプロテクトバンドを。」
「次々に目が覚めて暴れている者もいます。」
「そろそろ開始してはいかがでしょうか。」
春季は玉座からゆっくり立ち上がり、ウエディングドレスの裾を持ちカーテンを捲り挙げ顔を出す。
そして一呼吸してから、満面の笑みで、
「そうですね。始めましょう。『BLACK BOX』を。」
そして春季は弟のことを考える。
リベレーション
(春香、私の知る真実が分かるかしら。ふふっ。)
現在、春香は校内の中を徘徊中。
時は数十分前。
二人の男に運ばれながら気絶していたフリをしていた春香。
耳は塞がれなかったので気配と音で自分と運んでいる二人しかしないことを確認し、縛られていた手首の縄を気付かれないように解く。
普通の縛られ方なら固定されてしまうが、手の甲を表にしながら縛られると案外簡単に抜けられる。
そして次々に縄を解いていく。
最後に目隠しを取り、自分は箱の中に入れられていたことにやっと気付く。
長方形の段ボール。
長さは春香が入れ、ちょっと余裕があるくらい。
身体が浮遊感を感じない。
それは白いスーツを着た男たちは休んでいるからだ。
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