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二時間も山中を徘徊しちくと、人が踏み固めた小さな道を
見つけた。
しかし、ここがどこだか判らないため、すぐには出て行かず、
人が通るのを草叢の陰で待つことにした。
約30分ほどで、若い娘(と思われる)が歩いてきた。
”えっ?着物?今何時代?”頭が混乱した。
昨日までは、2016年だった。
誰も普段着が着物の人はいなかった。
腕時計も6月5日の朝9時13分を指しているいるではないか。
もしかして、俺一人だけが、タイムスリップして
しまったのだろうか。
深いため息と共に、一つ一つ頭の中で整理してみた。
しかし、整理すると言っても、眼の前の何日も風呂に入ってなく、
服もいつ洗ったか判らない垢まみれの顔をした娘しかないのだが。
俺は意を決して、この娘に声をかけることにした。
娘を驚かせないように、草叢から声をかけてみた。
”おーい、そこの娘さーん。”
娘は一瞬立ち止まり、こちらを伺った。
そこで、手だけ出して振ってみた。
娘はなおも、こちらを見ている。
仕方がないので、
”すみません。ここは何という場所でるか?”
娘の目が大きく見開いたと思うと、何か叫んで、
こちらに近づいてきた。
俺は敵意を見せないために、両手を上げて草叢から出た。
すると娘は、膝まづき、俺に向かって祈るような仕草をした。
俺はきょとんとなった。
尚も娘は立ち上がると、俺の手を引き、
どこかに連れて行こうとした。
娘に敵意がないことを感じたので、なすがままにしたが、
娘が何を言っているのか皆目判らなかった。
そうして10分も歩くと、村らしい場所に近づいた。
娘は大声で何か言ったかと思うと、家々から人が出てきて、
俺の後をついてきた。
やがて、村のはずれの神社らしき建物の正面で娘は立ち止まり、
中に向かって何か叫んだ。
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