始まりは突然に

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5分もすると、中から巫女らしき娘がおずおずと出てきて、 俺の前でひれ伏した。その頃になると、村の全員と思われる 30人ほどの人々が俺の後で同様にひれ伏した。俺は何が 何だか判らず、意味が通じないと分かりつつ、その巫女に 問いただしてみた。 ”あのー、これは何なんでしょうか。また、ここはどこで しょうか。” すると驚いたことに巫女は ”ここXX(諸事情により伏せています。)だ。あなた 言い伝えの神と同じだ。飯食うか” ”!!” この人、日本語通じるし、ここは、昨日まで俺が住んでいた 町の中心部じゃないか。すると今はいつ? ”今はいつ?” ”今は昼食前。飯食うか?” 何か話が食い違っているが、この巫女と話をした方が良さそうだ。 確かに空腹だったので、 ”飯食う。” と言った。 巫女はにこっと笑うと、俺を建物の中に案内した。 上座に座らせられ、暫くすると、焼き魚と焼き栗が出てきた。 これが食事らしい。塩気が足りなかったが食べて人心地した。 暫くすると、巫女が恭しく木箱に入れたものを持ってきた。 箱を開けると言う。こちらも恭しく木箱を開けてみると、 黄色に変色した布で覆われたものが出てきた。 布を開いてみると、そこには、腕時計が入っていた。 ”!!” しかも動いている。時間は、俺の時計より、約5時間遅れている。 巫女が言うには、これを10日毎に長い針二回りの間、 太陽神に見せることで、時を作るのだという。つまり2時間程度 太陽に当てるということらしい。昔神が現れて色々なことを 教えて、外敵からも守る方法などを教えてくれたため、 村は平和なのだという。 しかし、神もやがて死に、今残っているのは、これだけだと言う。 待てよ。これがあるということは、以前、俺と似たような人が、 ここに来たということか。この時計はチタン合金のソーラ電波 時計だから、太陽に充てていれば、半永久に動いているが、 電波がないから、補正はできないわけだ。今5時間程度ズレ ているということは、この時計は月差10くらいだから..... 約150年!!今俺がいる医大より、150年前に飛ばされた やつがいたということか。そいつとの会話の記憶が代々巫女に 受け継がれていたため、片言の日本語(というのか?)が できるのか。
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