始まり

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▽ 仕事は何事もなく終わりを告げた。 同僚の"香織"からのお誘いは、泣く泣くだが断った。 断ることに凄い気が引けたが、 「ま、急だったし都合がいい日にでも来てよ?」 と微笑を見せられれば、早く行きたくてたまらなくなる。 見た目ボーイッシュで可愛い同僚の事を考えつつ、徒歩で家までの道のりを進んでいる。 悪い、香織…。 今日は恵理さんが待っているんだ…。 独り暮らしをしている、アパートの管理人さんでバツイチな恵理さん。 三十路後半、子持ちなのにそれを感じさせない美しい笑顔。 あの落ち着いた雰囲気は、仕事疲れを癒す心の清涼剤。 ふとした時の憂いを帯びた瞳。 あ、考えただけで… 今年、中学校に進学した恵理さんの一人娘である"恵美ちゃん"。 部活に打ち込みながら、苦手な勉強も頑張るショートの髪が似合う活発な子。 「先生…、これよく分かんない。」 と、家庭教師のオレに保健の教科書を恥ずかしそうに見せてくる初な子。 あぁ、中学生に先生と呼ばれる。 これはこれで…。 いや、流石にダメか…? でも…。 あ、そういえば有名人が未成年のファンに手を出して捕まってなかったか…? 今日恵理さんに聞いてみよう。 ん、そうしよ。 考え事をしていたら、アパートが見えてきた。 ふと、足元からの眩しさに気付いた。 既に直視できないほどの明るさになっており思わず眼を閉じる。 瞼越しでも感じる光に戸惑いながら 全身に僅かな浮遊感を残して オレは意識を消失した。
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