僕は先輩の隣へ行く

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  「好き、です」  今から1年と2週間前、つまり去年の2学期終業式の日 僕は先輩に告白した。  先輩にプリティでキュアなハートをキャッチされてから約半年以上。  中々出なかったなけなしの勇気を振り絞って僕はようやく想いを告げたわけだ。 「先輩が好きです、大好きです」  先輩の元々大きな目が更に大きく見開いて真直ぐに僕を見ていた。 「先輩は奇天烈で、変人で、残念美人だけど実は完璧超人だから、僕なんかとは釣り合わないかもしれないけど」 「あれ?これ私告白されてるんだよね?馬鹿にされてるんじゃないんだよね?」  何事か先輩が呟いていたが構わず僕は言葉の続きを搾り出した。 「それでも僕は先輩と一緒にいたいです、付き合ってください」  心臓の音がスラッシュメタル並みのビートを刻んでいる。  こういう時1秒が果てしなく長く感じてしまうというのは本当らしい。  先輩が口を開くまでの間僕の脳内では。 「行けるか!?」 「いや無理だろ」 「馬鹿、諦めんなよ!」 「夢見てんじゃねーよ童貞」 「はいはい、無理無理」 「所詮ヅラハンターなんだよお前は」  などといった反省会という名のフルボッコが始まっていた。  緊張と不安で胃が逆流しそうになる。ダメだ、ふられてこの上先輩に今後ゲボ次郎とか名づけられたら僕はこの先生きていけない。  やがて先輩が口を開く  来る…!  僕は先輩の言葉に反射的に目を瞑ってしまい  そして 「うん…私も君のこと…好きだよ」 「…ふぇ…?」 「だから付き合おっかっていってんの」    ヅラハンターでもゲボ次郎でもなく「先輩の恋人」になることが出来たのだった。  ちなみに後日先輩は 「君の顔色が赤から青に変わって最後には土気色になっていったよね~、あれはすごかったな~」との感想を述べてくれた。  その様子が面白くて5分くらい返事をしなかったそうだ。  1秒が果てしなく長く感じてしまうとか詩的なことを考えてた僕に心から謝って欲しい。  そうして嬉しそうに笑う先輩を見てあぁこの人は本当に鬼だな、と思ったのは言うまでもない。  そして嬉しそうに笑う先輩があまりにも綺麗で、そんな僕の恥ずかしい詩的表現なんかどうでも良くなるくらい先輩に見蕩れてしまった、ということも言うまでもないことだろう。
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