僕は先輩の隣へ行く

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          × × ×  結局電車は雪が止むまで運行停止を余儀なくされたと知り、僕は諦めて歩いて先輩の下へ向かうことにした。  すっかり冷えた身体を途中コンビニで買ったコーヒーで暖めながら、降りしきる雪の中をひたすらに歩いた。  先輩は、もう着いている頃だろうか。時刻はもう18時50分を過ぎ19時になろうとしていた。 「電車が止まったので歩いて向かいます」とメールを出したが返事は来ない。  この調子だともしかしたら20時になるかもしれない。  自然と僕の足は駆け足になった。少しでも早く先輩に会いたかったから。  イルミネーションに輝く町を抜け、住宅街を越え、更にもう1つ町を越えた先に僕の目的地はある。  歩いていくにはうちの学校は少し遠すぎたと思う。  こういう時文系の自分の体力の無さが恨めしい。  もし僕が陸上部に入っていたら、きっともっと早く先輩の下に駆けつけられたはずなのに。  ただ、もし僕が陸上部だったらきっと先輩とこういう仲になることもなかっただろうと考えるとその矛盾が少し可笑しかった。  町の賑わいも、道行く人たちの笑顔も、降りしきる雪も、返信の無い携帯も なぜだか全てが僕を焦らせているような気がして、寒さを通り越した痛みに耐えながら走った。  やがて体力の限界が来て荒くなった息を整えるように僕は歩みを止める。  酸欠状態になっていた身体に冷たい空気が入り込んだ。  大分走ったと思う、文系ヒョロ男で体力0の僕からしてみればフルマラソン張りに走ったとさえ錯覚するくらいだ。  だが、それでも先輩の元へはまだ遠い。  その時、ピロリン♪  間抜けな着信音が鳴った、差出人は先輩だ。 「ちゃんと待ってるからね」  そのたった一言のメールになんだかすごく力を貰った気がした。  立ち止まっている場合じゃない、僕はまだ先輩に伝えたいことが沢山あったんだ。  無意識のうちに僕の足は1歩を踏み出していた  少しでも早く辿りつけば、何かが変わるのだろうか。いや変わらない  理屈では分っている、けれども何かに突き動かされるように、抗うように、僕はまた足を進めた  今更急いだ所で何の意味もないかもしれないのにも関わらず  僕はまた走った
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