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「………」
あまりの事態に戸惑い固まってしまう、なんだこれ。
困惑しながらも部屋の電気を点けると布団の中から「うぅ…」というぐぐもった声が聞こえた。
「うわっ!」驚いて思わず声を上げてしまう。
「うぅ…誰だぁ、勝手に人の部屋にはいってきたのはぁ」
そんな声と同時に布団がもぞもぞと動き出し、やがて中から人が出てきた。
「う~…よく寝たぁ…ん? 君は……どちらさん?」
眠たそうな目をこすりながら布団から這い出て来た女の子。
その女の子を「ハテナ」の化身みたいな顔で見つめ完全にフリーズしてしまった僕。
僕と「先輩」の出会いはそんなシュールな出会いだった。
× × ×
「ふむ、確かにここは美術室で私は美術部だ。なんと部長だぞっ!」
「あ、そ、そうですよねっ、なんだてっきり昼寝部かなんかと間違えたのかと」
「でも私絵描いたことないんだけどね」
「え!」
「ついでに部員も私しかいない」
「えぇ!」
「美術道具? なにそれ食えんの?」
「えぇぇぇぇ!?」
「君ここに来てから驚いてばっかだね」
楽しそうに笑う先輩だった。
だが僕の方はそれどころじゃない。
「そ、そりゃ驚きますって、じゃあ先輩はここで何してるんですか!?」
「え? ん~~~」
先輩はしばらく考えた後思いついたように
「まったり?」と答えた。
「これは……これはひどい…」
これは予想外だった。
どうりで顧問もやる気なさそうだったわけだ。
美術部入部希望ですって言ったら
「…びじゅつぶ? …………………………あ…! ああ! 美術部ね! はいはいはいはいそういえば私が顧問だったっけ(笑)」
とのたまい、説明するより実際に見たほうが早かろうとこの美術室の場所を教えられたのである。
だから美術部が過疎化している可能性やあまり真面目に活動していない可能性も考えたのだ。
けれどそれでもいいと僕は思っていた。
何はともあれ絵を描く場所という環境そのものが大事だったのだ。
しかしここははっきり言って先輩のプライベートルームだ。
誰が予想できるかこんなん。
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