僕は先輩の隣へ行く

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「よく廃部にならないですね」 「ふふん、私はゆーとーせーだからねっ!」 「それ答えになってるんですか?」  あとで分ることだが実際の所先輩は学校始まって以来の天才と評されるほどで全国模試でも3位以内に入るレベルの学力を持っている。  それだけじゃない、およそ殆ど全てのことはそつなくこなすはっきり言って完璧超人だ。  それこそ学校側もある程度のわがままは許容するらしい。  無い胸を張ってドヤ顔の先輩のこのアホみたいな答えもあながち間違いでは無かったりする。 「ところで君は新入生だよね?」 「そ、そうですけど」 「にゅうがくおめでとー、そんな君にはゼリーをやろう! おいしいぞー」 「なんでゼリーが…ってかなんで美術部に冷蔵庫があるんですかっ!」 「まぁまぁ。はい、私特製ゼリー」  はぐらかされつつゼリーを受け取らされた。  戸惑いつつ「い、いただきます」といい一口食べる。  何これ、うまっ。  もう調理部とか入れや。  その様子を見た先輩は 「ドヤっ!」って顔をしてた、というか言った。超うざい。  よく室内を見ると、美術室には小型のテレビからパソコン、簡易型の調理器具などあらゆる生活道具が揃っている。  この人はここに住む気か。 「授業でも一切使わない忘れられた教室だからね、私が乗っ取って改造しちゃった☆」 「もう何でもアリかあんた」  なんだか力が抜けて僕はソファーにへたりこんだ。  結局僕の美術部生活は半ば頓挫してしまったようなものである。  失敗した、僕にとって絵を描けない美術部なんて麺のないラーメン、ご飯の無い炒飯、卵の無いオムライスのようなものだ。  こんなことなら隣の席のグルグル眼鏡君が入るといっていたカレー部に入った方がまだマシだ。  と早くも自暴自棄になりかけ、カレー部への入部希望届けを書こうか本気で悩んでいる時。 「それで」  先輩の囁くような声が左耳すぐ近くから聞こえた。  気づけば先輩もすぐ隣に座っていたのだ。  ふわっといい匂いがした、シャンプーの香りだろうか。  少しドキッとして思わず先輩の方を見ると、先輩はその大きな瞳でこちらをジッと見ていた。
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