僕は先輩の隣へ行く

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「君は、絵を描きたいんだよね?」 「え、えぇ」 「そのために、ここに来たんだよね?」 「そ、そうです」 「そっか…どのくらい絵が描きたい?」 「え…?」 「君の絵を描きたい気持ちはどのくらいなのかな?」  僕のやる気を聞きたいのだろうか、先輩は本気なのか冗談なのかよく分らない顔をしている。  というか顔が近い、顔が!  僕は動悸する鼓動を隠しながら正直に答えることにした。 「もし絵を描けなかったら、自暴自棄のあまりカレー部に入ります」 「あーそりゃ大変だ…カレー部か…」  しばらく「カレー…カレー…」とうわごとの様に呟いていた先輩は突然閃いたように席を立ち 「ちょっと待っててね」と言いどこかへ行ってしまった。  それから約10分後、先輩は大量の画材を持って帰ってきた。  何故かカレー鍋も持ってきていた。 「先輩、それは?」 「カレーだけど?」 「じゃなくて! いや確かにそっちも気になりますけど」 「いやぁカレーの話するから急に食べたくなっちゃったんだよ。で、カレー部からぶんどってきた」  照れくさそうに笑う先輩、何この行動力。 「今日はカレーパーティだ! 遠くインドに想いを馳せながら2人でカレーを食べよう」  確かにカレーは好きだ、放っておくと毎日カレーを食べているまである。  そして鍋の中のカレーからは特段スパイシーな香りがする。フッ…なるほど、カレー部の名は伊達じゃないという訳か…。  などと不適に笑っている場合ではない。  先輩は「今日のカレーはどんなカレー♪」などと作詞作曲先輩によるカレーの歌を口ずさみながら2人分のカレーをよそっている。 「カレーは分りましたけど、この画材は…」 「ん? だってここは美術部じゃん。君は絵を描くためにここへ来たんでしょ?」  100%その通りだが先輩に言われると殺意の波動に目覚めそうになる。  だがそんな僕の気持ちとは裏腹に先輩はすごく楽しそうに画材をセットしている。  あっという間にここが美術部っぽくなった、カレー鍋が異彩を放っているがあれはカレー部とのコラボということで勘弁して欲しい。  そして先輩は画材の向こう側にぽつんと置かれていた椅子に座り実に楽しそうにこう言った。 「私を描いて見て。君の絵が気に入ったら、ここを美術部にしてあげよう!」  いや、ここ美術部なんだよね?  そんなわけで僕と先輩の部活動はちょっぴりスパイシーな匂いと共に始まったのだった。
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