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凛とした姿勢、鋭い口調。そのヒーロー、ブラックカイザーはマスク越しからひったくり犯を睨むように見ていたがその後ろから1人の青年が現れ、脅すようにひったくり犯へ声を掛けた。
「おい、てめぇ。さっきはよくもぶつかってくれたなぁ…あぁん?」
ひったくり犯は驚いて振り向くと先ほど肩をぶつけた青年が喧嘩腰で立っており、如何にも怒っていると解る表情をしていた。手に持っている鞄をだるそうに持ち、目はひったくり犯しか見ていない。
「一般人は手を出すな、こいつは俺がやる。」
「あ?喧嘩を売ってきたのはこいつだ、てめぇこそ手ぇ出すな!!」
ブラックカイザーは一応青年に注意をするが喧嘩を売られたと思っている青年はひったくり犯へ走って近づづいた。咄嗟の出来事でまだどういう状況なのか把握できていないひったくり犯はナイフを振り回すが、青年は鞄でナイフを防ぎ、相手の顎を殴った。ブラックカイザーは腕を組んで小声でほう、と一言呟き青年の動きに関心を持つかのように見ていた。
「あ、れ…!?」
殴られた衝撃で気を失ったひったくりの男はその場で倒れてしまう。あまりにも余裕だった青年はひったくり犯の腹を踏み、踵に力を入れていた。起き上がることはないだろうと考えたブラックカイザーがその犯人へ近寄り、ひったくった鞄と青年の鞄を拾い、青年に鞄を渡した。
「物は大事に扱え。それから貴様…野蛮だな。」
「うっせーよ。てめぇみてぇな偉そうなやつよかマシだ。」
青年はブラックカイザーから鞄を乱暴に受け取り、ガンを飛ばすが意に介さずブラックカイザーはそのまま青年の横を通り抜ける。その後、パトカーのサイレンが近づいているのが解り、ブラックカイザーと青年はその場から逃げるようにして消えていった。パトカーが到着した頃には二人が居らず、コンクリートの上で気絶しているひったくり犯のみだった。
◆
ひったくり犯を殴った青年は気だるそうに教室に入り、自分の席へ座った。ナイフで刺された後のある鞄をどうしようかと考えていると既に教室へ来ていたもう1人の青年がこちらへ向かって話しかけてきた。
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