第五章 青春は一つだけじゃない

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最も理不尽で極まりないこんな戦いは勝負なんかじゃない。これを無謀と言うんじゃないのか? 「勝敗も何もルール違反じゃないか!」 全くもってこの競争に正々堂々というのが一つもない。フェアプレーなんて一つもないじゃないか! 「落とし穴を掘ってはいけないというルールはないもん。逆に私の罠術こそ、これぞ実力よ!だから勝ちは勝ち!はい!私の勝ち!」 言い返せれない。正論すぎて何も言い返せれない。だからこそ悔しいじゃないか。 「というわけで言うことを聞いてくれるんだよね?」 「チクショッ!…けど、まぁ、約束だからなぁ…」 ため息を吐きながら仕方なく言うと友梨はフッフッフッと不気味に笑いだす。 「じゃ~あ…まずはアイスクリーム買ってきて!」 友梨は砂浜に建ててあるアイスクリーム屋を指で指して言った。若いお姉さんが接客して30代前半くらいの男の人がコーンにソフトクリームを載せる作業をしている。 「いらっしゃいませ!なにをご注文されますか?」 「俺は抹茶バニラミックスのダブルで…友梨は何味にする?」 「んーと、ストロベリーグレープスペシャルのビッグトリプルにしようかな。」 俺の頼んだ抹茶アイスは至ってシンプルだったが、友梨の頼んだ三段アイスはコーンのサイズに合ってない様な大きさだった。 一段目がストロベリーで二段目がグレープ、三段目がストロベリーとグレープのミックスになっていた。 昔から甘いものは友梨の大好物だった。パフェを食べに行った時だって5人前のパフェを一人でペロリと食べてしまう程だ。 「相変わらず、甘いものが好きなんだな。」 友梨が食べた時、んーーーー!と頭を抑えながらも美味しそうに食べる。いつもの恒例のワンシーンである。 「甘い物こそ最強なのだよ!分かってないな~兄貴。」 指を立てて振りながらチッチッチとやる。 「遡って何万年前の頃だったか、世界は甘さこそ最強だった。甘い物を沢山持っている者が一番偉く、逆らえばケーキになって食べられてしまう。だから甘さは最強。これは法則なのだ。」 これは友梨の妄想の世界の話です。そんな昔話はこの世に存在しません。 「ヘー ソーナンダー」 「なっっ!ぼ、棒読みで返事しないで!」 そんなに語られても、どう返事すれば良いのかさえ分からなかった。正直ボー読み以外に方法は無かったと思っている。
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