第一章 俺達の青春と出会い

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こんなに遅くなる事も珍しい。かと言って一度も怒られた事が無いわけでもない。むしろ、もう慣れっ子だから、もう怖くもない。 ……っていうのは嘘。そんなのは理想。全然慣れてない。っていうか慣れれない。 「あは…ハハハ……………ほんっと!ごめんなさい!反省します!」 とにかく必死に謝る事にした。なぜなら命に危機を感じたから。 「♫♪♪…あ!お兄ちゃん!」 何よりご機嫌そうに妹が鼻唄しながら、上からドタバタと降りてきた。 「今日、帰ってくるの遅いよ!お母さんが心配してたよ?」 そんな訳がない…。そんなはずがない…。 「嘘だ。そんな訳ねぇ。そんな優しくねーよこの人。」 この人に限ってそれはあり得ない。その通り、あり得ないんだ! 「え?私、優しいじゃない?いつも可愛がってあげてんじゃんかぁ?あぁん?ごらぁ!」 「とにかく、遅く帰る事は止めなさい。最近は不審者も増えて物騒なのよ?」 それは言えている。最近はナイフを持った強盗犯が逃走中だとか。行方も分からず、しかもこの地域での犯行だそうだし。 のくせに俺は寝過ごしているんだよな。 何だろう…きっと俺は馬鹿なんだろうか。 瞬間、頭に何かが過った。俺よりも遅く学校に居た奴がいる。 あいつは大丈夫なのだろうか。今更俺が行ったところで、きっとすれ違う事に違いないだろう。しかし、それではいつ犯人に捕まってもおかしくない。 今度会う機会あれば早く帰るよう、言わなきゃな…。俺も人のこと言えた義理はないが……。 リビングに入り、テーブルの上には友梨と母さんが食べてたであろう、おかずがラップで被されていた。 食後、食器を洗い落着した後、ソファーの上に座りテレビをつけた。 ニュース番組に変えてリモコンをテーブルの上に置くと、身長の低くて伸び悩んでいそうな地毛の茶髪ツインテールの友梨が俺の膝の上へと飛び込んできた。 実はこれ、日常茶飯事の行動である。昔から妹のスキンシップは決まって激しい。 しかし、中学3年生のこいつに飛び込まれると俺の膝にかなりの負担がかかる。正直セーフとアウトの境目くらいまで負担がかかっている。 「どうかしたの?大丈夫?」 何事もなかったかの様に接するあたり、反省の色もない。 「大丈夫な訳あるか!お前体重何キロだよ。膝が死ぬかと思ったわ。」 「それだけ元気があるなら大丈夫だね。あと、女の子に体重聞くのはモラル的に良くない。絶対にやっちゃダメ!」 そうか…妹なんだから一応女性だったな…。俺、一応レディーファーストだから許すけどさ…。 「少しはお兄さまを気遣いなさい。」 そうは言ったものの頷きもしなくて、聞く耳を持たない友梨には無謀の様だった。テレビに映るニュースの方が気になるみたいだ。 「ねぇお兄ちゃん?」 低いトーンでこっちに振り向かず、テレビを見ながら俺に話し掛けた。 「最近、笑わないね…。…楽しくないの?」 楽しいと言ったら嘘になる。実際、楽しくない。進路を間違えたと真剣に悩むほど後悔している。 「ばーか。学校に楽しさ求める方が間違ってるってーの。人の心配より自分の心配しろよな。」 正直、そう言うしかなかった。たとえ、図星を言われたとしても。 「それもそうかもしれないけど…。苦痛じゃなければ良いんだけどね。」 あまり深くは聞かれたくない事だ。 妹とはいえ迷惑を掛けたくない。心配してくれるのは感謝するべき事なのだろうけど。 「ねぇねぇ!また今度遊ぼうよ!」
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