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興奮状態の友梨は目をキラキラさせながらテレビの音が聞こえない大きな声で誘ってきた。
「何言ってんだよ。良い歳してお兄ちゃんと遊びたいのか?お前のプライベートをとやかく言うつもりは無いけど友達と遊んだら?」
友梨には反抗期というものがなかった。珍しい家庭なのか良く分からないが、兄妹仲良しというのは滅多にないケースらしい。
しかし、心配でもある。学校でいじめられてないかとか友達付き合いを大事にしてほしい思いもある。
だから最近、一緒に遊ぶのを避けていた。人の事を言えた義理ではないけど、友達との縁は大切にするべきである。
っていうか、保護者でもないのに…
「友達はみんな忙しいの。それに私はお兄ちゃんと遊びたいの。だから絶対に遊ぶもん。」ッフン
「俺は遊びたくないもん。だから絶対に遊ばないもん。」ップイ
そう言うと友梨はブーブー文句を垂れる。
外の景色の灯りが消えていき、やがて暗闇に落ちていった。時刻は短い針が11を指す頃くらいか。
お風呂、洗濯物、掃除を済ませた後、ソファの上で寝てしまった友梨をおんぶして布団の上に寝かせる。
母は仕事疲れで寝てしまい、代わりに俺が家事をやる。
昔から妹の世話は俺がしている。
別に親が世話をしないわけでは無いが、
2人で居る時が多かった事もあり、任せられてる機会が多く、当たり前の様になっていた。
いつになっても成長しない妹の姿は兄として可愛げもあるが、もう少し大人になってほしいものだけど。
不意に思い浮かぶ。
青春って一体何だろうか。こういう普段の何も無い日々がそうだというのだろうか。
そんなの耐えられない。受験を死ぬ程頑張ったっていうのに何も変わらない。
進路も違う選択をすれば何かが変わったのだろうか。
考えると考えるだけ辛くなる。今はただ現実逃避をしたいだけかもしれない。
何も考えたく無かった俺はゆっくりと目を閉じた。
ジリジリジリジリと目覚まし時計が鳴った。
だが、起きる気力がない。学校に行きたくない。起きたくない。現実に戻されたくない。
朝は毎日睡魔というボスと戦っている。だが、そんなボス戦中にいつも勇者が登場してくるのだ。
「お兄ちゃん!起きて!」
そう。彼女は女勇者・友梨であり、睡魔という魔王を今日も討伐しに来た。
しかし、魔王は勇者に倒される運命である。そうシステムで助かった。何故なら、現実というリスタートが出来ない世界で学校を遅刻してゲームオーバーになってしまう。
「くだらない冗談言ってないで早く起きて!」
「嫌だ!俺は超大魔女マジカ☆マルカと一緒に魔王を倒すんだぁ!」
完全にうわっという冷めた表情で惹かれた気がした。
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