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夢で会う君は、いつもどこか遠くを見ている。
わたしは片時も漏らさず君を見つめているのに、その視線は決して交わることはない。見慣れた学生服の襟をはためかせ、ついぞ遠くを見つめ続ける。
それはきっと、現実の暗示なのだろう。
気づかないようにと必死に目を逸らしているだけで、隣で笑う君は、その瞳は、どうしようもなくわたしをうつしてはくれないのだ。どこか遠くの、わたしではない誰かを想う瞳は、有象無象をうつしてはくれないのだ。
だから、決意した。
下校途中。一歩先を、自転車を押して歩く君のYシャツの裾を掴んで、振り向かせる。
どうせ、わたしに振り向いてはくれないと知りながら。
「君のことが、好きです」
恋にさよならを告げる言葉を、口にした。
了
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