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500字以内 改稿版
ジューンブライドなんてろくなもんじゃない。
生憎の雨天に遠出の予定を覆して歩む足が熱烈に訴えている。時折彼の持つ傘が傾いて、私の顔を覆い隠す。
彼が足を止めたのは凡庸な公園でだった。傘がたたまれる。いつの間にか、雨は止んでいた。
ようやくの好天の気配に顔を出した鳩達が、餌目掛けて地面を突っつく。彼の指先が、その中の一羽を指す。群れから浮いた、純白の鳩。
「あーいう鳩、やっぱり仲間にはいじめられやすいだって」
それは雑学の披露だったのかもしれない。だけれど自分に投影してしまう。時には人目から隠してもらう整った容姿。ゆえに距離をおかれる自分に。
「でもほら、もっとよく見てみ?」
白い鳩。ともすれば標的にされる、弱い存在。
それだけではなかった。その鳩には、常にもう一羽がそばにいた。
「守ってくれる奴はいるものなんだよ」
ーー俺みたいに。
“雑学の披露”だなんて、美化しすぎだ。彼は決して清廉ではなくて、時として小狡くて、どうしようもなく優しい。
水溜りが陽光を反射して、世界が光に満ちる。
ふさわしいシチュエーションだった。六月の花嫁も悪くないかもしれないなんて青写真をえがいた、この瞬間に。
了
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