1.こころと優しい鬼

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新たな希望の面を取り入れ、一時は消滅の危険さえあったこころ。 しかし最近では希望の面も自分も安定していて、不安な要素は何一つない。 いや、ひとつだけある。 本当の自分の表情だ。 佐渡の大狸、二ッ岩マミゾウに指摘された通り、こころには表情がない。 無表情が自分の本質だと思っていたこころは表情を学ぼうと戦いに明け暮れた。 しかしそれではあまり効果が得られなかった。 最後の方キレちゃったし。 だからこそ、今の私に必要なことは。 「霊夢。多くの人間や妖怪に出会うにはどうしたら良い?」 「は?いきなり何を言ってんのよ」 霊夢はいかにも不機嫌そうな顔を向けてくる。 不機嫌の表情はああやって作るのか。 「私の本質は未だに無表情。戦いのうちに感情を学んだ割に変化が見られない。それってあんまり役に立たなかったって事なんじゃない?」 「いや、私に聞かれても…」 でも、と霊夢は言葉を繋げた。 「戦いで駄目なら、会話してきたら?」 「会話…だと?」 「そ。人とか妖怪とか。じっくり話してきたらどう?」 会話とはまた原始的な、と私は密かに考える。 しかし考えてみれば、戦ってきた奴ら以外とは会話を交わした事すらない。 だからこその会話か。 「旅出るか」 「あら出かけるの。どこに行こうと別にいいけど、異変だけは起こさないでね」
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