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私の時間も『タスク』の時間もある時期を境に時計の針が止まった。
もう私達を知る人なんてきっとほとんどいない。
友達と呼べる友達も、いなかった私のことを思い出してくれる人なんて、きっとほとんどいない。
学校なんて本当はどうでもいい。学校に行かなくなった私に会えなくて寂しいなんて言ってくれる人も時間とともに減った。やってみたいことなんてない。誰と話していいのかわからない。
いじめられもしないし、いるとも扱われない空気と同じ存在。
「わかっていたのに…どうして」
どうしていっちゃったんだろう。
あちこち痛む体を抱きしめて視線だけそこに移す。
そこには型落ちしてもう何年もたった子供用の携帯電話が、時が経つのも忘れているかのように、綺麗な状態で床に落ちていた。
学校で待ってるよ
「何…期待してるんだろ…」
このメールだっておざなりの社交辞令メールだってことはわかっているのに。
目頭が熱くなる。もう泣いたってどうしようもないのはわかっているのに。
父親だってわかっている。だから欲しいものは全て与えてくれるんだろう。
この家から出られない私へのせめての謝罪のつもりで、人身御供のお供えのような感覚で、物を惜しみなく与えてくれるんだろう。
最初は訳が分からなくて泣いて、声がかれて、手の皮がむけるまでドアを叩いて、声帯を傷つけて声が出なくなって、それでもこの檻は私を開放する気がないのを知り
そして諦めたのだ。
(諦めたのに何泣いているんだろう)
この頬を伝う涙はきっと私のものじゃない。
だって私は悲しくないもの。
もう1度体をぎゅっと抱きしめると、ゆっくりと瞼を閉じた。
今の私と同じように、その小さく丸くなる様子が、光の粒の1つとして目の前を通り過ぎた。
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