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「う…」
遮光カーテンから差し込むわずかな光に目を細めると、外はすでに日が昇っていることに気が付く。
時間の感覚は・・・ない。
体はどこも疲れていないはずなのにひどく眠い。頭もぼんやりとして白い靄(もや)がかかっているようだ。
視線だけ泳がすと見慣れた部屋の風景が目に映る。ここは私の部屋ではない。
けれど自分の部屋ではないその部屋がひどく落ち着く。まるでそこが自分のあるべき居場所であるかのように、その部屋の全てが私を拒絶しない。
そのまどろみに近い感覚に身をゆだねていると、下から規則正しい足音が近づいてきた。
その足音は部屋の前までやってくると、中の人物を確かめることなくドアを開く。
「あぁ、私のかわいい“タスク”。帰ってきてくれたのね」
慈愛に満ちた美しい横顔、その顔は母というよりはメスの顔をうかべ、目の前の人物を焦点の定まらない瞳でうっとりと見つめる。
そして私はまた同じセリフを繰り返す。
「ただいま…母さん」
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