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思わず声をかけると、今度は言葉が届いたようで振り返えらないままわずかにうなずかれる。
頭上では相変わらず金属音が鳴り響いていて、今辛うじて盾に守られているここから抜け出すことは、すなわちまた新しい暴力と向き合わなければいけない事を暗に語っている。
かといってこのままだとおそらく消耗戦に近いようなことになるのも目に見えている。
そうなれば私だけじゃなくて周さんも共倒れになる可能性が高いことも、もうわかりきったこと。
考える時間はもうあまりない。
目の前の周さんは時間とともに呼吸が荒くなっていっているし、ここから打開できるだろう唯一の武器は使い物にならない状態で転がっている。
(これを解除しても周さんは星甲のスキルで多分大丈夫)
それでもこれを解除しないのは私のせいだ。
(私が動ければ…)
もどかしい気持ちとは反対に、体はひどく緩慢にしか動いてくれない。
痛みを耐えながらそれでも動かせる場所を探す。
左腕はなんとか動く。けれど両足はしびれてしまっていてまともに立ち上がることすら出来ない。
「む…」
そこで上から攻撃を繰り返していた酒呑童子が、自分の攻撃が不思議な小刀に弾かれた衝撃でぐらりと揺れ、錫杖がすっぽ抜けて後方へ飛ぶ。
その先にいた小鬼はその犠牲になってつぶされ、その小鬼と戦っていたプレイヤーは驚いた声をあげている。
(今しかない)
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