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鬱蒼と木々が生い茂り、踏み締める道は植物達に支配されている。
少女と少年の住まう村の裏にある小高い山。2人は山頂に向かって獣道を突き進んでいた。
多種多様な植物が道を阻み、羽虫はうっとうしく顔の周りを飛行している。
だがそんな小さな障害などものともせず、少女と少年の足取りは悠々としていた。幼い頃から慣れ親しんだ裏山だ。どこをどう進むかなど、身体が覚えている。
「ふふふ、相変わらず凶悪な魔物が出てきそうな場所ね……! 山頂まで、なるべく力を温存しながら進みましょう!」
「魔物いねーじゃんこの山。何の力を温存するんだよ」
「もー、いちいちツッコまないでよね。気分の問題なんだから」
少女は首を動かして睨みつけるが、隣の少年はただ面倒臭そうに頭を掻くだけだった。
少年にとっては本来寝ている時間帯なのに、今は少女と共に裏山を探検している。何の得にもならないこの行為。少年はすぐにでも帰って寝たかった。関羽抱き枕と共に。
「……というか、何でアンタは私の隣を歩いているのよ」
「は?」
「『勇者が先頭』は鉄のオキテでしょ!? 魔法使いなら私の1歩後ろを歩きなさいよ!!」
突然甲高い声でまくし立てる少女。少年は何度目かのため息を大きく下に吐き出す。目の前の少女は相手するのにも体力を使うのか、と。
「何で俺が魔法使いでお前が勇者なのか。まずソコから説明しろ」
「アンタ魔法しか長所無いじゃない。それに比べて私はパーフェクツだし」
「魔法は俺以下だがな」
「剣術は私の方が上よ」
「お前バカじゃん」
「偏ってんのよアンタの知識」
「偏ってねーよ。2次元に関しては広く深い理解を示して
「絶滅しなさいキモヲタ」
「2次元がある限り!! 人の夢は!! 終わらねぇ!!!」
うん。黒ひげです。
「ちょ……。急に大声出さないでくれる? シ○神様が驚いたらどうするのよ」
「○シ神様いるのかこの山」
そんな会話を繰り広げつつ、カラカラカラと軽快な音を出すコダマ達を無視しながら、少年と少女は山の中を突き進んでいった。
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