刻印

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兄は、焦った様に、声を荒げた。 わたしは大人しく手を止め、冷めた目で、彼を見る。 ………卑しい。そう思った。 身動きも取れず、妹に懇願し、悶え、それでも尚、そのような醜態を晒し続けることを望んでいる。 卑しい。可哀想なお兄ちゃん。 でも、そんな哀れさを愛しくも感じた。 可哀想に。可哀想に。可哀想に。 ……でも、救ってなんか、あげないよ。
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