第一夜

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たいした荷物があるわけでもなく、引っ越しはあっさり終わった。 「これで二人きりだね」 翠は子供のように無邪気にそう言った。 彼の頭の中では、私は女ではない。 家族が、女に変わることが出来るんだろうか? 家族として必要とされる存在である事で満足するべきなんだろうか? 香夜は同居を素直に喜べなかった。 世間では、いまどきのカレカノの関係だと、普通にキスくらい済んでる年だろう。 そんな考えが無くならない。 今回の同居も、同棲とは呼べない。 でも、目の前で喜ぶ翠に、そんな下世話な悩みを押し付けたくない。 祖父も言っていた。
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