第一夜

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子供の頃は、この満天の星空が怖くて、一人で空を見たことはなかった。 山のなかにあるこの家で見る夜空の星はまばゆいほどにきらめいて、まるで今にも自分を何処かに連れ去っていくのではないかと思えて、祖父や翠の手を握りしめていた。 今は、あの得体の知れない怖さは感じない。 かわりに少しだけ寂しさを感じるようになった。 夜空の星が、湖面に映って、美しい場所だと思った。 この場所を守りたい、と。
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