第一夜

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「バカみたいだなぁ、あたし。」 小さく呟いてみた。 「何が?」 翠に背中から抱きつかれて、驚いた。 「何、びっくりした。」 「何か言ってた、何?」 「ん?うん。この場所を守りたい…だなんてね。バカみたいだなぁ、って思ってね。」 「何で?」 「何でって…」 隣に座り直した翠が真顔で覗きこんでくる。 真っ直ぐな視線にたじろぐと、翠は湖を眺めて、大きな声で言った。 「ボクはこの場所をまもるよ。」 香夜が恥ずかしくて口にすることを躊躇った言葉を、翠は堂々と宣言した。 「香夜も一緒に。」 そう言うと無邪気に笑った。
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