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──俺は、負けられない
俺を信じてくれる人がいる。俺を待っていてくれる人がいる。
そして──俺を『俺』にしてくれた親友が目の前にいる。
今度は俺が、お前を、佐藤結城を助ける番だから!
「行くぜ、結城……今度は俺がお前をお前にしてやる番だ」
最後の力を振り絞り、拳を構える。
俺にはもう余力は無い
だから小細工も無しに拳の殴り合いだ。それは例え、あいつでも判っている。
「分かってる。お互いに余力が無いって事は……なら、する事は単純明快だ。昔からお前とは『コレ』で決着を着けてきたしな」
結城もボロボロな身体で同じように拳を握り、構える。
俺と結城の左手首には、あのシルバーのブレスレットが輝いている。
どちらともなく地面を蹴って、接近し拳を突き出す。
顔面、腹、顎、鳩尾など急所を狙う攻撃を防がず殴り合う
当然、口の中は切れ、血の味がした。
だけど、そんなのは気にならない位に気分は高揚していた。
知らない内に口はニヤけ、笑い声が漏れる。
それは結城も同じ様で、楽しいといった風に笑っていた。
「ここまで来るのに、色んな事があった!両親が居なくなって、俺を助ける為に自分の存在を犠牲にした聖霊達、俺を後押ししてくれた人達がいた!」
「だからどうした!俺にはそんな奴は居なかった!助けたいと、護りたいと思った奴を護れなかった俺の側には、誰も居なかった!」
俺の叫びに返す結城の慟哭の叫び
それは酷く悲しく、卑屈だった。
「だから、その人達の為にも俺はお前に敗けられない!お前の親友としても、俺個人としてもだ!」
渾身の一発を結城の顎に入れる。
カウンターの一撃を、左に躱しながら綺麗に結城の顔に吸い込まれていく
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