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「…………」
「その人はいつも一人で、どこか寂しげで……俺は、その人の笑顔が見てみたいって……思っていました」
「……」
顔を上げた紫音と目が合う。
その視線は、俺の目を通して心の中まで見ている様で……視線を逸らさず見詰め返す。
「自転車の後をつけてフォーチュンを知って……通いました。 マスターにはすぐにバレました」
「えっ……」
マスターが知っていた事に驚いている。
「マスターのお許しが出て、それから何度も通ったけどいつも会えなくて……やっとオッケー貰った春休みのバイトの予定も、盲腸になってダメになるし……」
自嘲気味に笑って紫音を見ると、強張る程の緊張感が消えたが、いまだに俺の腕に囲まれていたのを思い出した様にモジモジと身動ぐ。
勢いでついた手を退かしたら、紫音に逃げられる気がして……両腕を掴んだ。
「リフォームの為に、マスターの所にお世話になるってなった時、嬉しくって……」
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