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「俺、最初はただ、紫音先輩の側にいたかったんです」
意識が他に向かない様に、細い両腕を掴んで離せなかった。
「俺が告ったら、混乱するだろうし、気不味くなるだろうから……笑顔でいて欲しいから、伝えるつもりはありませんでした」
「……」
「人と関わり合う事を避けているみたいだったから、ただ側で……紫音先輩が望む、穏やかな暮らしを……護りたかった」
紫音が、下口唇を噛んでいる。
「そう思っていたんだけど…………」
紫音が、俺の言葉を聞いててくれてる。
真剣な話の内容から……この話題でなんなんだけど……
「俺が……そのーー……あんな所をバレちゃったから……」
あんな所……の後、しばしの間の後、紫音の顔が真っ赤になった。
「だから!……」
紫音の腕を一度だけ揺さ振る。
「真剣に……清水の舞台から飛び降りる覚悟って言うか、そんな感じなんで……モノは試しに……なんて言われ方は……納得いかないです」
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