第1恋

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隣に顔だけを向けると、ばっちり二重のキレイな瞳と私の瞳が絡み合う。 「どうかした?笹宮くん」 「えっ!?あ、ううん……っていうか、笹宮くんなんていうのはやめてよ!は、陽斗………って呼んでほしい、かな」 「分かった。じゃぁ陽斗ね。私のことも悠でいいよー」 「ほ、本当!?」 「当たり前でしょ」 目をキラキラと輝かせる陽斗を見て、友達境界線強化リストに追加しようと心に決めた。 明らかに私に好意を持っているのは分かるし、あまりの分かりやすさに裏があるとも考えていたけど。 この瞳は嘘偽りのない純粋な瞳であることに間違いはない。 何の根拠もないただの思い込みだけどね。 私にはあまり関係のない内容のため、窓の外を眺めた。 今日は帰ったらまた新しく出来た曲を録画して、動画サイトにアップする。 柚夢のギターが加わるようになってから、またたくさんの反響が寄せられていた。 投稿されているコメントを見ると、本当にたくさんの人が感動してくれていることが分かる。 私たちの音楽で、勇気、希望、元気を与えられているということも。 何よりも、聞いてくれた人を笑顔にできる音楽を作れていることが、すごく嬉しい。 もちろん私たちには、それぞれの仕事や生活があって中々練習時間も取れないけど、短時間の中で内容の濃い練習をしている。 ちょっとでも時間があれば、煌たちは私の家に来てくれるし。 ……ただ単に、大和と柚夢と玲央のことが心配なんだろうけど。 それでも8人全員がそろったときは、本当に賑やかで楽しすぎる。 今日の夕飯は何を作ろうかな、と今までの私の生活では絶対に考えないことも考えるようになった。 前よりもずっと音楽のことを好きになれて、より深く考えるようになった。 過去の自分と向き合えて今、ここにいる私の心は今まで生きてきた中で一番、白いと思う。 彼らが、白くしてくれた。 透き通った窓の向こうには、優しさに混じる真っ青な空とそこに寝転ぶ真っ白な雲。 彼らのことを考えながら空を見つめていると、新しい音たちが浮かんでくる。 それを忘れないように、すぐにルーズリーフを取り出してメモした。 .
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