第3恋

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はっ! 大和で思い出したけど今何時だ!? そういえばまだ一度も携帯を見ていない! 私はカバンの中から携帯を取り出して、時間をまず確認。 うん、この時間なら面談がないときのいつも通りの時間だから心配はされていない。 今日は何を作ろう……冷蔵庫の中は何があったっけ? 「あっ!」 「あ!?驚かすなよ!」 そうか、この手があったではないか! 「先生!」 「な、なんだ?」 「私、帰りに買い物して行きたいから、近くのスーパーで降ろしてもらえれば大丈夫!」 「買い物?」 「そう。ほら私、1人暮らしだけど一応毎日自炊してるんです。卵とお醤油切らしてるの思い出して。だからスーパーまででいいです!」 「……へぇ。お前、自炊してるのか。偉いな」 「へへっでしょ~!だから、スーパーまででお願いします」 「………」 ん? 何だろう、その無言。 妙な沈黙に先生の顔を覗き込もうとしたけど、手に持っていた携帯の震えがそれを止めた。 げっ……このタイミングで柚夢からの電話ですか。 「……もしもし?」 『悠、今どこら辺?』 「ごめん、今電車の中だからまた後でかけなおすね」 『あ、ごめん!気を付けて帰って来てね。もし買い物行くなら、歯磨き粉も買ってきてほしい』 「分かったよ。じゃ、また後でね」 ふぅー……うん、今の電話に怪しいところはなかったはずだから大丈夫。 そっと隣をちら見してみたけど、真っ直ぐ前を向いて運転しているだけだった。 何だろう……何か突然、車の中の空気が鉛のように重苦しくなったと思うのは私だけ? さっきの無言の意味も気になるけど、下手に口出ししてスーパーに降ろしてもらえなくなったら困るし。 ここは大人しく、沈黙と仲良くしていよう。 .
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