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店員さんからも、他のお客さんやこの時期の観光客からも、たくせんの視線を受けているのはいつものこと。
もう誰も気にしないし、何とも思わない。
……たまに、ものすっごくたまに写メろうとする人がいたりするんだけど。
その時はいつも、勘の鋭い築茂が私を背中に隠して写されないようにしてくれる。
男は撮られても別に問題はないらしく、私だけは絶対に阻止したいそうだ。
私も別に撮られても構わないけど、と言えば納得するまで有難くもない話を聞かされた。
この人たちはきっと、全員いい父親になりそうだよ。
「よし、次はどこに行く?」
袋に入れられた商品を持とうと手を伸ばせば、さらっと煌が先に持っていく。
こうやって小さな優しさもいつものことで、毎回ありがとうと言っていたら当たり前のことだから言わなくていいと怒られた。
私たちの中で“当たり前”が増えていくのがすごく嬉しくて、この気持ちを忘れちゃいけないと常に思ってる。
「いいネクタイが売ってるとこないかな?やっぱりプレゼントは毎日使うものがいいと思うんだよね」
「確かに。イオンの中になかったっけ?」
「あったと思うよ。1階の奥に」
煌と日向の言葉に道路を挟んで向かい側のイオンを見る。
「じゃぁご飯食べてからイオンに行こう。みんな、お腹空いたでしょ?」
「待ってましたぁ!!めっちゃ空いてる~」
「俺も、すごく、空いた」
「空雅と玲央は相変わらずだねぇ。何食べるー?」
歩きながらも私はあちこちに目が行ってしまって。
「お、何だあれ?」
前を歩くみんなに遅れて、おもしろそうなものがあったら勝手に店の中に入ってしまう。
「うげっ」
「また悪い癖が出てるぞ。ほら」
そしてそれをいつも阻止してくれるのが、築茂。
「だってぇ…手の平サイズの丸いお掃除ロボットとか気になるじゃん!」
「ならないな。掃除など掃除機があれば十分だ。お前がいなくなると全員が焦るんだから、絶対にはぐれるな」
「はーい」
私の腕をがっしり掴んで、少し落ち着いたら手首を引っ張ってくれる。
逃げないから放して、と言ったところで毎回冷たい視線を浴びせられてるから意味がない。
ただ、私と築茂を見る玲央の視線から逃れたいんだけどね。
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