第3恋

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キレイにラッピングもしてもらえたことに満足した私は、大切にネクタイを抱きしめた。 柚夢なら私がどんなものをあげても喜んでくれるけど、これを身に着けてくれると思うと嬉しくてたまらない。 「ふふっ」 「何をそんなににやけている。お前のそれも、悪い癖だぞ」 「はいはい!気持ち悪くてすいませんでしたねー」 「……そういうことにしとけ」 「だってこれを毎朝柚夢に縛ってあげるんだと思ったら、嬉しくて嬉しくて。あぁ早くあげたい!」 軽く叫べば、築茂はちょっと驚いたような顔をしてすぐにふっと微笑んだ。 「よかったな」 ぎこちなくだけど優しく頭を撫でてくれた築茂の、あまり見せない穏やかな笑顔は。 私に心を許してくれている証拠。 普段は冷めた表情に見られることの多い築茂だけど、私はこういう笑顔を知っているから。 「築茂」 「なんだ?」 「大好き!」 「……」 この笑顔を、大切にしたいんだと思う。 「悠、買えたー?」 「煌!うん、ばっちり!」 「よし、じゃ俺たちも選ばないとな」 「うん!」 煌は何にしようかな、と呟きながら前を歩き始めた。 「悠、行こ」 「玲央!うんっ」 私の手をさりげなく握った玲央の手は、本当に大きくて。 簡単にすっぽりと握りしめられる。 私はいつも必ず、誰かしらの手に握られていて、絶対に1人では歩かせてもらえない。 1人行動をしようとすると、何も言わなくても必ず誰かが後ろをついてきて。 私のことばかりに気を遣ったら疲れちゃうんじゃないかと思うんだけど。 確かに1人行動をすると、声をかけられて絡まれることが多いから男が1人いるかいないかだけでも全然違う。 ……番犬みたいだな、とか考えちゃダメだよね。 たまに、みんなは私に縛られすぎて苦しくないのかなと思う。 いや、私は縛りつけている気はないんだけれど、みんなは私から離れようとしない。 その理由がどうしてなのか分からないから、不思議になる。 .
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