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煌たちもそれぞれプレゼントを買い終わって、これから家へと帰る。
玲央のバイクに空雅、煌の車には築茂と日向と私が乗り込んで。
後部座席が好きな私の隣に座るのは、日向。
「悠、荷物後ろに置いたら?」
「ううん。プレゼントは大切だから自分で持っていたいんだ。ありがと」
「そっか。潰さないように気を付けないとね」
ふわっと柔らかく微笑んだ日向に、私も笑顔を返す。
車が発進してからしばらくして、プレゼントを持っていない左手が、ぎゅっと日向の手に包まれた。
私は何も言わずに、その手を握り返す。
煌と築茂からは見えない位置にある私たちの手から伝わる、日向の体温が気持ちよくて。
身体の内側の汚れが洗い落されていくような感触の車内の音楽も、気持ちよくて。
うとうとと、頭が重たくなってきた。
「……悠、眠かったら俺の肩に頭を乗せて寝ていいからね」
「ん……ありが、と…」
日向の鳥が歌うような、まるみのある声音が私を睡魔に引きずり込む。
ゆっくりと瞼を閉じれば、さらっと髪の毛に温かい感触がしてそれもまた気持ちいい。
「……日向、……なよ」
「はは……どう…」
誰かの声が、途切れ途切れに僅かながら聞こえてくる。
その声さえも、今の私には気持ちいい理由にでしかなかった。
頬にも安心する温もりがあって、何かに優しく包まれているようだ。
こういうのを“愛されている”って言うのかな。
私は本当に愛されていると常に思うけど、私はその与えられている愛と同じくらい、愛せているのかな。
きちんと、愛しているってこと、伝わっているのかな。
「愛…して、る……」
心の中で言ったつもりが、無意識に声に出ていたときには私はもう。
夢の中。
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