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「…う、悠、悠!」
「んん~」
「着いたよ」
まだ眠気が残る中、ゆっくりと瞼を持ち上げるといつもの日向の甘いフェイス。
どうやら、家に着くまでぐっすりだったらしい。
「日向、おはよう」
「ふふ、おはよ。さ、降りて」
「うん」
煌と築茂はすでに買った荷物を車から降ろしているところだった。
私も自分の荷物を持って車を降りて、すでに大和のバイクを見つけて裏口へと向かう。
「ただいま~」
「おかえり。まだムウは帰って来てないぜ」
「よかったぁ。いっぱい買ってきちゃった!」
「何買ったんだよ?」
「メインはネクタイ!毎日使うし、すごく柚夢に似合いそうなのがあったんだ」
「よかったな。あー俺は何にすっかなぁ」
「いつも通り、ちょっと捻くれたのがいいんじゃない?」
「おい、それどういう意味だ」
「へへへっ」
リビングのソファで1人、アルトサックスの手入れをしていた大和。
私は手を洗って冷蔵庫の中身を確認しながら、笑った。
「どこに置く?ムウに見つからないところがいいよね?」
「うん。私の部屋なら誰も入らないからそこに置いとくよ」
「分かった。先にこれ、悠の部屋に持って行ってもらってもいい?」
「了解~」
煌からプレゼントをそれぞれ受け取って、私は自分の部屋へと向かった。
私の部屋には、私の洋服やベッドに机とイスくらいで、一番殺風景。
大和たちがこの家に住み始めるときに、絶対に私の部屋には男は入らないっていうルールを勝手に決めたらしい。
別に私はいいんだけど、と言ったら俺たちがダメなんだよ、と返されたから仕方がない。
まぁ、どっちにしろ私も自分の部屋にはあまりいないんだけど。
「日向、何作る?」
「スパゲッティとサラダ、スープを作ろう」
「はーい。何からやればいい?」
「サラダは一番最後でいいから、スパゲッティを茹でてもらってもいい?」
「うん」
リビングに戻って、早速夕食を作ろうとしている日向の隣に立つ。
こうやっていつも日向に何をしたらいいか聞いて、作るのが当たり前のことなんだけど、どうしたんだろう。
……日向の様子が、変。
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