第3恋

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普通の会話に、いつも通りの優しい表情をしているんだけど、何かが違う。 いつも一緒にいるからちょっとした違いにも私はすぐに気付ける。 今の優しい笑顔は、どう見ても無理やり作っているようにしか見えない。 雰囲気もどこか、拒絶をしているようだ。 ……私、何かやらかしたのかな。 いつだ?どこでだ? 今日のことを思い出せ! 朝、車に乗るときに日向の足を少し踏んでしまったこととか? 勝手に車の窓を開けていたけど、それが嫌だったとか? トイレに行ってくるとき、荷物を持たせてしまったこととか? いやいやいや、日向がこんなことで怒る器の小さい人じゃないってことはよく分かってる。 じゃぁ他に理由は何? あ……帰りの車で寝ちゃって、肩に頭を置いていたのが重かったのか!? もしかして、よだれなんか垂らして服を汚してしまったとか!? で、ちょっと疲れて私に怒っているのか!? あ、あり得る………。 私ならあり得る! 早く謝って、服もキレイに洗わないと。 「ちょっと、悠!?」 「え?」 ガシャンッッ!!! 「……っ…」 頭では日向のことを考えながら、手は麺を茹でていた私は。 茹で上がった麺をザルに移そうとしたとき、いつも熱いから気を付けてねと日向に言われていたのに。 集中していなかった私は、思いっきり鍋を滑らして。 熱いお湯と麺は、私の足にかかった。 「悠!!」 「今の音は何だ!?」 あまりの熱さにその場に座り込んだ私に、日向が血相を変えて叫ぶ。 音を聞きつけた煌たちが、慌ててキッチンに入ってきた。 「悠!?」 「あ、ははー……ごめん、麺が台無しになっちゃった」 「何言ってるの!?すぐに冷やさないと!」 「おい、まさか火傷か?」 「大丈夫大丈夫!ちょっとだけだから」 日向は冷凍庫に氷を取りに、いつの間にか全員がキッチンに入り込んできて。 築茂は怖い顔で私の腕を引っ張る。 でも私は突然のことでなのか、痛みがあるからなのか、立ち上がれなかった。 .
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