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平静を保ちながらも、頭の中は言い訳を考えるのに必死でかなり焦っている状態。
刑事や探偵が使うような鋭い瞳を向けてくる築茂に、私も負けじと視線を這わせた。
「……柚夢へのプレゼント、気に入ってもらえるかなと思って。ライトブルーは嫌いな色じゃなかったかなってちょっと心配になってたの」
それらしい理由をすぐに思いついた私に、盛大な拍手を送りたい。
「そうか……お前は、いつもムウのことを考えているのか?」
「えっ?」
「ムウのことを考えているときのお前は、すごく幸せそうで……いや、何でもない」
「待って、築茂」
僅かに歪められた表情で立ち上がった築茂の腕を、しっかり掴んだ。
「私、築茂へのプレゼントを考えるときも同じような顔していたと思う。築茂からもらったハンカチを見て、すごく幸せな気持ちにもなるよ」
「…っ……!」
「だからそんな顔をしないで、築…」
「っ!!」
名前を呼び終わる前に、強く抱きしめられた身体。
私の髪に手を差し込んで、苦しそうにきつく私の身体を締め付ける。
「築茂!!…っにしてんだてめぇ!!」
と、思いっきり私と築茂の身体を剥がしたのは、今にも築茂に噛みつかんばかりの顔つきの大和。
「悠は大人しく足を冷やしてろ!築茂、お前は病人を襲う趣味でもあんのか?あぁ?」
「……ふっ、病人であろうがなかろうが、悠相手なら常に襲う気は備えているが」
「てんめぇ……俺のいるところでもいないところでも、こいつに触れるのは許さねぇ!それは暗黙のルールじゃなかったのかよ!?」
ん?暗黙のルール?
「築茂、俺らの前でそんなこと出来るようにまでなるなんて。よっぽど、溜まってるんだね」
「お前だってそうだろ、煌。いつまでも牽制しあっていても、何も変わらない。いい加減、こいつに俺らが男だということを分からせなければな」
牽制しあってるって……どういうこと?
「ほら、見ろ。何も知らないこいつは平気でこんな顔が出来る。自分の立場を理解していない」
え、なになに、3人の視線が怖いんですけど。
こんな時にいつも助けてくれる日向は、私がこぼした麺やお湯の片づけをしているのか、姿を現してくれない。
空雅と玲央は漫画でも読みに行ったのか、いつの間にかリビングにはいなかった。
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