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料理がテーブルに並べられる間、ハンディさんは持ってきていたあまりにも少ない荷物を部屋の隅にキレイに置いていた。
「ハンディさん……荷物、これだけですか?」
「はい。こちらでお世話になるのは瑠璃様だけですので」
「え?ハンディさんもでしょ?」
「とんでもないです!ご迷惑ですので、私は近くのホテルに泊まります」
「はぁ!?何言ってるんですか!そんなのダメですよ!迷惑なんかじゃないし、部屋も広いので寝るところもたくさんありますから!!」
「ですが、玲央様の言いつけなので……」
「玲央?」
「あ、いや……」
おいこら玲央、話が違うじゃないか。
「玲央ー!!!」
私は、リビングのドアから顔だけ出して、洗面所にいる玲央の名前を呼んで。
すぐに瑠璃ちゃんと来てくれた玲央は、ちょっと驚いた表情で首を傾げた。
「ちょっと玲央、ハンディさんはホテルってどういうこと?何でホテルなの?」
「……ハンディ、口滑らしたの」
「も、申し訳ありません!!」
「何でハンディさんを責めるわけ?何かやましいことでもあるの?」
「おいおい悠、落ち着きなって」
「煌は黙ってて!」
ハンディさんだけ仲間外れみたいな真似をした玲央の真意が分からなくて、私は静かに玲央を睨んだ。
「瑠璃ちゃんも、ハンディさんと一緒がいいよね?」
「うん!一緒じゃないの?」
「大丈夫だよ。空雅!」
「お、俺!?」
「ちょっと瑠璃ちゃんに漫画読ませといてもらえる?瑠璃ちゃん、このお兄ちゃんがおもしろい漫画、たくさん知ってるから読んでもらわない?」
「漫画!?見るっ!」
「じゃぁちょっと待っててね。空雅、お願いね」
「おう」
不安そうな瑠璃ちゃんをこの場から遠ざけて、玲央に向き直った。
私には2人ともここに泊まるって言っていたのに、嘘を吐いていたことが悔しい。
理由もなく嘘を吐くはずがないと信じているから、私はその理由を聞きたいだけ。
「玲央、どうして嘘吐いたの?」
「………」
「あ、あの神崎様…っ!」
「私は玲央に聞いています」
秘密の1つや2つあることは別にいいけれど、私たちの関係で嘘を吐かれるのはすごく嫌だ。
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