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寂然として一層唇を固く閉じ、眉根に深く刻んだシワをピクリともさせない玲央。
悲痛な顔をして沈黙を決め込む玲央に、私はそっと手を伸ばした。
「玲央……?ハンディさんのことすごく大切に想っている玲央だから、嫌いとかそういうことじゃないのは分かってるよ」
青白い肌に触れながら、俯いている顔を覗き込む。
「だから余計に不思議なの。どうしてかなって。それとどうして私には嘘吐いたのかなって」
「……ごめん」
今にも泣き出しそうな玲央を見て初めて、ちょっときつく言い過ぎたことを反省した。
「ううん、私もきつく言い過ぎちゃってごめんね。ただ、玲央が私に嘘を吐いたのって初めてだったから。ちょっとショックで」
小さく微笑むと、ハッとさらに傷ついたような表情で唇を噛んだ。
「俺……嘘、吐いたんだ…」
「え?」
「嘘吐いてるなんて、思ってなかった……バカ、だな」
それはつまり、意図的に嘘を吐いていたんじゃなくて自分でも気づかないうちに嘘になってたってこと?
あぁ、確かに玲央ならあり得るかも。
「ふっ……私もバカだね。冷静に考えればすぐに分かったことなのに。玲央が私に嘘吐かないこと、知っていたのに」
「……悠」
「あーあ、あんなに怒った自分がバカらしい!玲央、ごめんね」
「悠は、何も悪くない。俺が、ごめん」
甘える子供のような笑顔で、玲央の頬に添えていた私の手を握った玲央。
誤解していた私は、無意識に嘘になっていたことを知ってすごく安心していた。
「で、どうしてハンディさんはホテルに泊まれなんて言ったの?」
「………」
ええぇー、ここまで来てまただんまりはちょっと酷くない?
「神崎様、それはっ……」
「悠、その理由なら悠以外ここにいる全員が分かってるよ」
「はい?」
呆れた表情でやれやれと苦笑を零した煌に、私は眉を動かした。
「うん、俺が玲央の立場だったら同じことしてたと思うな」
「お前は肝心な時に鈍い」
苦笑する日向に、冷たい眼差しを送りつけてくる築茂の言葉がさらにハテナ。
意味が分からないのは、私だけ?
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