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「うぉぉぉお!!はっ!?え、ちょっ!」
「おりゃぁぁぁ!!」
第一回戦、煌VS私。
私のレベルはもちろん鬼なので、必然的に煌も鬼にすれば。
それはもう、見物人がごろっと出来るほどに私たちは叫びながらひたすら太鼓を叩いていた。
「やっったぁ!煌に勝った~!」
「いや……あれ、あり得ないでしょ。悠、どんだけ手が回るんだよ」
「ふふんっ。コツがあるんです~。さ、次は日向だよ!」
「う、うん……怖いんだけど」
見事煌には圧倒的なポイントの差で勝利し、バッチを日向に突き出す。
顔を引きつらせながら、煌からバッチを受け取った日向。
「うそ…うわ、む、無理無理無理!」
「あはははっ!いっけぇぇえぇ!!」
第二回戦、日向VS私。
目が回るほどの速さで動いて行く画面に、日向はついて行くのが精一杯。
私は笑いながらもできる余裕があり、この状況をめちゃくちゃ楽しんでいた。
「よしっ!2人に勝ったぁ」
「悠……強すぎ!本当に何でも出来るんだね」
「音楽なら任せろいって感じっ」
参りました、とげんなりとした日向に思いっきりピースサインを向ける。
「あぁ……悠、こんなところでそんな表情しないで」
「え?何?」
「……いや、何でもない」
口元を手で覆って視線を逸らしながら何か呟いた煌の言葉は、ゲーセンの音で私の耳に届いてこなかった。
思いっきり子供たちが私たちに注目していることに気付いて、慌てて太鼓の前からずれる。
やっぱり子供たちに圧倒的な人気の太鼓の仙人は、ずらりと後ろに行列が出来ていた。
「さ、早く退散しよっ」
キラキラと眩しすぎる瞳を向けられてたまったもんじゃないから、私は2人の腕を掴んで出口へと向かう。
「あー楽しかった!大和たちともやりたいなぁ」
「大和はうまそうだな」
「でも絶対に負けないし!たぶんね、空雅が一番うまいと思う。ドラム叩けるし、ゲームとかは一番得意でしょ」
「確かにそうだね。ムウと玲央が太鼓叩くなんて、想像できないかも」
「いや、それより築茂がバッチを持っていること自体、異様な光景にしかならないよ」
ははは、と3人で笑いながら歩く歩幅は。
煌と日向が私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれている。
そんな小さなことにまで気を遣ってくれることが、私の胸を熱くさせていた。
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