第4恋

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「あれっ……いない」 来てみたのはいいものの、肝心の煌と日向の姿が見当たらない。 あんなに目立つ2人だからすぐにいるかどうかなんて分かる。 だけどいくら探しても、それらしい人影はなかった。 「どこに行ったんだろう……?」 もしかしたら2人も選び終わってすれ違いになっているのかもしれない。 もう一度、花火売り場のところに戻ろうとした、その時。 「……神崎?」 すっかり忘れていた人の声に、肩が跳ねた。 振り返る前に1度大きく深呼吸をしてから、何もボロを出さない表情を作る。 「おい、神崎だろ」 半ば無理やり肩を掴まれた私は、ゆっくりと振り返った。 「……風舞先生、奇遇ですね。こんなところで」 この場に煌と日向が来ませんように、と心の中で必死に祈ることで頭は精一杯。 それでも顔には余裕な笑みを浮かべながら、驚いた表情をしている風舞先生を見上げた。 「お前、1人か?その花火……」 「はい、1人ですよ。今日、近所の子供たちと花火をする約束をしていて。それを買いに来ました」 「…そうだったのか」 「風舞先生は?あ、もしかしてデート?いいですねぇ」 「いやいや、そんな相手どこにもいないだろ」 「えっ?先生の後ろに白い服来た女の人が……」 「大人をからかうな。もうちっとまともな嘘つけ」 「ちぇっ、ダメだったか」 風舞先生がビビっている姿が見られると思ったんだけど、やっぱりそう簡単にはいかないか。 それよりも、早く煌と日向と合流しないと、2人がここに来るのも時間の問題だ。 さっき、先生を見つけたときに2人にはしっかり姿を見せていなかったから、何か誤解してもまずいし。 「じゃ、先生。私ちょっと急いでいるんで」 「あぁ……そうか。大丈夫か?1人なんだろ?そんな荷物抱えて、転んでもしたら大変だ」 「全然大丈夫ですって!先生も早く彼女さんとデートしてきてください」 「だから、俺は1人でただ買い物に来ただけだから」 あぁもう、いい加減解放してくださいよ。 .
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