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あの俺様の大和からは考えられないほど、優しくて甘くて柔らかい、キス。
このまま大和を好きになれたら、どんなにいいだろう。
「本当は……お前の周りに男が1人でもいるのは、嫌でたまらねぇ。だけど、お前の笑顔はあいつらから生まれているものもあるから」
うん、そうだね。
私はいつもみんなに笑わせてもらっていて、みんなと一緒にいるから幸せなんだね。
「お前の笑顔を大切にしたいなら、あいつらの存在も大切にしようって思うようになれたんだ」
………何てイケメンすぎる発言なんだ。
こんな大和を目の前にしていると、自分のやっていることは残酷って言葉じゃ表せないくらい酷いんじゃないかと思う。
私はどうしたら、いいんだろう。
「大丈夫だ、悠。焦るな。ゆっくりでいいから、お前の気持ちが決まった時、聞かせてほしい」
何か今日の大和、優しすぎて大和じゃないみたい。
ある意味怖いというか、薄気味悪いというか……どんな心境の変化なんだろう。
「大和、今日なんか変なもの食べた?」
「……お前、どうしていつもムード壊すわけ?」
「だって大和が優しすぎて怖いんだもん」
「へぇ?俺はいつも優しくないと?」
「不器用な優しさはあるけど、こんなにストレートな優しい言葉なんて言わないじゃん」
「それは……まぁ、そうだな」
ほーら、やっぱり。
何か後から見返りとか求められたら困るから今のうちにいつもの大和に戻ってもらわないと。
「大和は俺様でバカで不器用が一番いいよ。優しいのは日向と煌でいっぱいいっぱい」
「……うわぁ、ちょームカつく」
「ムカつかないムカつかない。さ、大和くん。そろそろどいてもらわないと、誰か来たらヤバいんじゃない?」
「ったく。お前には本当に敵わねぇな」
軽く舌打ちをしたけど、私の言葉通りに身体を起こしてくれた。
赤みのかかった茶髪は、無造作にセットされていてぐしゃぐしゃとかき乱せば、ちょっと幼くなる。
薄らと綺麗に焼けている肌には、ニキビ1つない自然なまま。
睨めば、それだけで人を殺せそうな目力の中にはいつも熱い魂を持っていて。
その熱いものは、どうやら人にも与えるらしい。
だって今の私の中にも、自分ではよく分からない熱い何かが大和の言葉で入り込んできたから。
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