第1恋

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楽器ケースや荷物を適当に置いて、さっそく日向はキッチンへ。 「大和は17時でバイト終わるって言ってたな」 「うん、柚夢は18時」 時計を見て呟いた築茂に、私は頷いた。 「だーかーら!!何度言ったら分かるんだお前はっ。人の名前の最初は全部大文字!」 「え、えぇ!?これって名前なのか!?」 「Mr.って前に書いてあるでしょうが……」 柚夢が帰ってくるまでにあと1時間半はあるけど、この調子だと絶対に終わらない。 よし、最終兵器だ。 「築茂!手伝って!」 顔を見なくても、かなり嫌そうな表情をしていることは分かる。 それでも何も言わずに目の前のソファに座ってくれるんだから、いいやつ。 私よりもずっとスパルタの築茂が目の前にお座りになったことで、空雅の額に冷や汗が滲む。 ごくり、と唾を飲む音が、大きく聞こえた。 その隙に私はキッチンで今日の晩御飯を作り始めた日向のところへ。 「日向、今日は何作る?」 「オムライスとオニオンスープを作ろうと思うんだけど、ちょっとケチャップが足りないかもしれない」 「それなら俺がコンビニに行ってくるよ」 「ありがとう、煌」 さっそく車のキーを持ってコンビニへと向かった煌。 何せ、8人分のオムライス……まぁ1人で2人前くらい食べるやつもいるからかなりの量が必要なわけです。 「私も手伝うよ。もう空雅の課題はこりごり」 「あははっ、お疲れ様。じゃぁ、先にご飯研いでもらっていい?」 「はいよー」 何とこの家には炊飯器が3台あったりする。 もちろん、私が1人暮らしの時は1つもなかったんだけど。 理由はご想像にお任せします。 「そういえば日向、大学はどう?」 「うん、すっごくいい環境で音楽が出来るよ。とても楽しい」 「そっかぁ!私も前に1度だけ行ったことあるけど、すごい広いよねぇ。部活は頑張ってる?」 「うん。煌と築茂がいてくれるからすごく心強いしね」 「3人がコンクール出るときは、みんなで観に行かなくちゃ!」 「ふふ、頑張るよ」 学年主席でS大学に入学した日向は、もちろん器楽専攻のテナーサックス。 煌が部長を務める吹奏楽部に、去年の築茂のように日向は春休みから練習に加わっている。 やっぱり、技術・表現共に日向は推薦入試で高評価を得ていた。 こうやって料理をしながら、日向と話す時間がすごく好き。 .
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